浸透流 Seepage Flow

砕波帯の浸透流

 砂浜のようなビーチでは,地中に水が浸み込んだり,また,地中の水が水中に出て来たりしています.

 海浜の堆積物表層において,明条件下では,光合成により酸素が生成され,逆に,暗条件下では,無機化のために酸素が消費されます. 透水性海浜において,波動の作用により,底質内間隙水と水底直上水との交換が助長される場合,堆積物表層における酸素の生成と消費が,浅海域における水質や生態系に対して,より重要な意味を持つことになります.

 ところで,砕波帯では,水底上の振動流,波の遡上,砕波に伴うwave set-upや,流れによる底層の洗掘等を通して,透水層内の水の運動が波動の影響を受けます. その結果,砕波を伴う波の各位相で変動する外力が,時間平均的な流れとして現れる浸透流に関与するでしょう.

 そこで,本研究では,透水性海浜における,間隙水を含む水の運動のメカニズムを解明するための基礎的研究として,砕波帯の透水層に存在する間隙水の運動を可視化し,浸透流の流速ベクトルを求め,更に,間隙水圧を測定して,浸透流の特性に関して調べました. 本実験では,周期の異なる3通りの入射波条件を対象として,海浜浸透流を可視化し,砂中の間隙水圧の空間分布及び時間変化を測定することを試みました.

砂浜の水みち

 自然が砂浜に描いた幾つもの筋に,気付かれたことがあるでしょうか.

 写真1は,磯海岸に刻まれた多くの筋です.

 発生後,あまり時間が経過していなければ,筋の中に水の流れを見付けることができるでしょう. 地下水が地上に現れ,それぞれの筋が恰も微細な河川であるかのように,海に向かう流れが形成されているのです.

 更によく観察すると,流量が大きな筋では,砂粒がどんどん海まで運ばれているのがわかります. 筋が深く掘り込まれ,発達していく過程にあるのです.

 こうした,水の流れによって形成される筋を「水みち」と呼ぶことにします.

 砂浜の水みちは,引き潮時に,砂浜が姿を現すにつれて,次第に形成されていきます. 海水位が,砂浜内部の地下水位より低くなり,海に向かう浸透流が生じて,ある高さで地面から流出します.

 写真2は,吹上浜の水みちですが,一定の高さから水みちが始まっていることがわかります.

 また,降雨によって後背地に地下水が滞留した後,これが砂浜内部の浸透流となって,水みちを形成する場合もあります. 続きを読む.