水の波 Water Surface Waves
水の波とは,どういうものなのでしょう.

マッハ波
2方向に進む波が重なって,非常に大きな波となる場合があります. 振幅が 1 の二つの波が重なり,振幅が 2 よりも大きくなる場合があるのです. このようにして生じた波をマッハ波,または,マッハステムと言います.これは,波が見せる非線形現象の一つです.

<進行方向が異なる2波の重なりのイメージ>
斜交波が伝播する波浪場において,波の斜め相互作用に起因して「マッハステム」が形成されると,周辺の波浪状況と比較して大きな振幅の波が出現し,航行中の船舶に危険がもたらされる可能性があります. 一方,海岸護岸や防波堤に波が斜め入射し,構造物沿いに伝播する大きな振幅のマッハステムが形成されると,砕波や越波が生じ,更に,流れ場にも影響の及ぶ場合があります. こうしたマッハステムは,KdV理論によると,波の入射角が臨界角に達した場合,波高増幅率が約 4 倍となります. また,波の非線形性が強い場合には,波高増幅率が 4倍に達しないという数値解析に基づく報告もあります.
ところで,マッハステムは,十分な時間の経過後,入射波の波高水深比と入射角に依存した最大波高を有する定常な状態に達します. しかしながら,この定常な状態に至るまでのマッハステムの発達過程に関しては,定量的な評価があまりなされていないのが現状です.
そこで,本研究では,非線形波動方程式系に基づく数値解析を行ない,様々な入射波条件に対するマッハステムの形成過程をシミュレートしました. 更に,マッハステムが,異なる波向きの波と重合する場合や,鉛直壁に衝突する場合の挙動に関しても調べました.
渦度を考慮した
非線形波動方程式
密度成層が発達した沿岸域では,「内部潮汐波」や「内部セイシュ」のような長周期内部波とともに,「境界面の不安定性」や「海底地形の空間的な変化」等が起因とされる短周期内部波が観測されています.また,数値計算において,「波の弱非線形性」を考慮すると,波群から「拘束波」や「自由波」として発生する,数分程度の周期の内部波が再現されます.
こうした様々な周期の内部波が表面波と相互干渉しながら伝播するとき,表面波と内部波の両者が互いに,または,それぞれが独立に,広い周波数帯域にわたる成分波間でエネルギー交換を行なうでしょう.更に,浅海域に達すると,表面波・内部波ともに,非線形性が強くなるでしょう.
そこで,本研究では,「変分原理」に基づいて,表面波と内部波が共存する波・流れ場の支配方程式系を導出し,表面波及び内部波の「強非線形性」・「強分散性」が考慮可能な数値解析手法を開発しました.基礎方程式系の導出において,各層の速度ポテンシャルを鉛直分布関数の級数に展開し,「練成振動」の概念を適用して,平面2次元の非線形方程式を求めました.
波の制御
海岸構造物等によって,破壊的な波を制御して,人間社会や環境を守る方法が考えられてきました.
本研究では,消波ブロックを用いて築造された低天端離岸堤を対象とし,消波ブロックの動揺特性や滑落条件に関して検討しました.
その際に,静水位が朔望平均満潮位(HWL)である場合と共に,最高満潮位(HHWL)及び平均水位(MWL)である場合も対象として,不規則波の作用下における,堤体の安定性,消波ブロックの滑落状況や,波高伝達率に関して水理模型実験により検討しました.
また,これまであまり考えてこられなかった,長周期波を入射させる場合,または,長周期波と不規則波とが連続した波列を入射させる場合を対象とし,うねり等の長周期波成分が存在する場合の,離岸堤消波ブロックの安定性及び波高伝達率に関して検討しました.
孤立波
波長が無限大の一つの山,または,一つの谷でできた波を「孤立波」と言います.

本研究では,非線形波動方程式系の定常進行波の数値解を求めるための手法を提案しました. そして,この手法を用いて,表面孤立波解及び内部孤立波解を求め,得られた数値解を理論解や数値解析解と比較し,解の妥当性を調べました.